言葉の生み出す世界

近頃些細な言葉の使い方が気になっている。

「引き出す」。最近のJijiの感覚だと、コーチはクライアントから引き出したりはしない。引き出すのはあくまでクラアント自身。自分で気がついていく。むしろコーチは限りない共感を示すだけ。「へぇー」「ほぉー」「ふーん」評価しない。こうじゃない!とか、それじゃダメとか言わない。コーチが強調するのは、クライアントさんの目の前には、豊かな選択肢が広がっていて、それを自由にクライアントさんは選べるってこと。変わりたくないなら、変わらなくてOK。コーチが尋ねるのは、それがあなたの本当に望んでいることなの?ってことだけ。事柄じゃなくてクライアント自身に焦点を当てて尋ねる。

そして、この「クライアント」って言葉も気に入らない。どうも治療の関係を連想させる。コーチはクライアントを治療しない。ある理想のモデルがあって、アセスメントを用いて、理想型とクライアントの現在との差異を導き出し、理想に近づけるようにアドバイスなんてことはしない。クライアントにとっての最高の専門家はクライアント自身。誰もそれ以上の専門家を用意できない。
だからタイプ別診断に対応して付けられている対応策は解決策としては嘘っぱちだ。それはあくまでアセスメントでしかない。解決策はオーダーメイドしかありえない。クライアントさんが覗いている世界はみんな一人一人違っているのだから。このタイプだったらこうすればいいなんてあり得ない!
ただ困ったことにこの専門家。よく自信を無くして、専門家としての力を発揮できない場合が多い。だからコーチは専門家に、「自信をもってください。あなたの力はすごいんです。よく観察してください」と、専門家として力を発揮できる環境を整えてあげるだけ。
だから、コーチングに慣れ親しめば、コーチの役割は減る。クライアント自身が内なるリーダーシップに目覚めて、価値観に沿って動き出す。

だから、コーチ・クライアント関係っていう固定した役割関係も気に入らない。あくまで対等なんだから、お互い役を入れ替わるのも全然OKっていうか、代わらないとダメでしょう。あるテーマではAさんコーチ。Bさんクライアント。別のテーマでは逆かも。共に場を共有するものとして、お互い響き合うほうがいい。

「〜べきだ」っていうのも耳障り。これを多用する人の話は聞くに堪えない。思いっきり枠で話をしているんだよね。全然相手を受け止めていない。あなたの言っていることは正しいかも知れない。でも、退屈。あなたの心からの気持ちとは思えない。私はあなた自身と会話したい。
「〜したい」は弱い。「〜する」じゃなくちゃ。それが言えないってことはまだ心にひっかかっていることがあるって証拠。
現在語から未来志向へ。現実を切り取る言葉として、事態は変えられないと暗に言うのはやめよう。同じ言葉ならば、事実を説明する際、未来の可能性に切り替えた方がずっと気持ちがいい。


ハワード・ゴールドマンのすごい考え方
ハワード・ゴールドマン著 / 松林 博文訳
中経出版 (2005.12)
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