心理学の根本原理

諸富祥彦先生の「はじめてのカウンセリング入門_下_ほんものの傾聴を学ぶ」http://honto.jp/netstore/pd-book_03315697.html

はじめてのカウンセリング入門(下)―ほんものの傾聴を学ぶ

はじめてのカウンセリング入門(下)―ほんものの傾聴を学ぶ

を読んでいて、大学の時に学んだ、「人の心の内の関係と、人同士の関係性は相互に影響しあう。心理学的な関わりとは、人のそうした性質を利用して行う。」という根本原理を改めて、再確認した気がしている。

この本で諸富先生が改めて、本物の傾聴について丁寧に記述して下さっている。どんな練習・訓練を積めばよいかも書かれていて、聴き方研究家のRyoji☆としては、すごく参考になる。
諸富先生はカール・ロジャースの研究家でもあるので、そもそもロジャースが何を言っているのか?ハイライトを抜き出して下さっている。ロジャースの要旨は、カウンセリングの実証研究を通じて、クライアントさんに効果があったのは、クライアントさん自身の自己内対話を促進するような場を、カウンセラーとクライアントの関係性が作り出せた時に、カウンセリングは意味を持つということだった。
逆にカウンセリングが進まない例としては、(1)ストーリー・テラー(2)分析家(3)感情ぶちまけがある。この時カウンセラーは、クライアントさんに対して「焦点の合わせ所が違う!」と介入することが求められるだろう。(Ryoji☆はコーチング始めた頃、ストーリーテラー&分析家だったから、だから苦しかったと今なら分かる。自分自身の自己内対話を行う際の焦点がずれまくりだったので、いつまでも苦しみから抜け出すことが出来なかった。(>_<))

カウンセリング学習の最初は、クライアントさんが発言したことのオウム返ししか許可されない事が多い。余計なこと=クライアントさんが述べていない事をカウンセラー見習いが言うと減点される。それはそれで初期の練習としては意味ある体験と言えるだろう。
しかし、諸富先生によれば、ロジャースは、決してオウム返しや感情を伝え返すことをロジャース自身は意図していない。ロジャースは、仮にカウンセラーの発言がクライアントさんの気持ちを外してしまっても、「今ここで、あなた(クライアントさん)の自己内対話として起きている、何とも言えない心の内は、こんなんで合っていますか?」と、クライアントさん自身の世界をチェックしようと応答している、とのこと。実際40代の頃のロジャースの応答と晩年の応答の逐語録を読み比べると差がある。40代はオウム返しの感じが強く、晩年はより自由(カウンセラーが自己内に響かせた結果感じられる、クライアントさんの内的感覚を言語化する)に表現している。
そして、諸富先生曰わく「どんな内容を伝え返す」というよりも、如何にクライアントさんが自己内対話を促進出来るか?「どう伝えるか?」の方が遥かに重要とのこと。つまり、メタ・スキルを訓練することが大切。この領域になると、傾聴力と言うよりも、諸富先生曰わく「カウンセラー自身が自分の人生を精一杯生きているか?」ってことにも繋がる。(それなくして、よきカウンセラーには成れない。)
「コーチとして傾聴出来ているか?」に2005年以来、心砕いて来たRyoji☆としては、あまりRyoji☆自身がどんな存在としてあり、どう伝えるか?を意識していなかっただけに、唸った。「話を聞いて貰った気がしない!」と訴える部下に、立て板に水がごとく、内容を伝え返し、「聴いているよ!」と宇都出さんが言い返したエピソードが思い出される。そう。内容は確かに伝え返した。だから、「聴いている」。しかし、「どう伝え返したか?」によって、聴いて貰っている相手は「聴いて貰ったのか?」「聴いて貰ってないのか?」を判断する。コンテンツ(内容)ではなく、コンテキスト(文脈)。そう本物の傾聴とは訓練が必要な、熟達化を要求される難事なのだ。

ただ、Ryoji☆のコーチングが機能している時はある種、スイッチが入るのは確か。従来のRyoji☆は、それを意図的起こすことは出来なかった。しかし、その状態に入ると、クライアントさんの作り出す世界観に浸り、味わう気になる。逆に言えば、意識してなかったけど、機能してる時は自然とそれをやっていた。天然な、フロー状態で稀にやれることだった。
この伝え方の工夫という点は、ミルトン・エリクソンの現代催眠に通じる気がする。セラピストがクライアントさんの自己内対話を促進しやすいように、通常の会話では使わない言い回しをする。その為のテクニック。その趣旨は、セラピストがクライアントさんを操作するのではなく、クライアントさんの世界観に合わせて、よりクライアントさん自身にも関わる周りにも受け入れやすい変化を促進すること。
ここも紙一重の違いなのだが、受ける印象はまるで違う。NLPに惹かれながら、どうも違和感を禁じ得ないのは、確かにテクニックとして教わった通りのことをすれば短時間で劇的な効果がある。しかし、そこにNLPerとしてのBeingが込められていると感じられない時が多い。自分が知っているテクニックをクライアントさんに振る舞っているだけな印象がある。それは操作なのだ。ロジャースが慎ましやかを失わなかったのは、あくまでもクライアントさんに寄り添い、あなたの世界観に私はちゃんと着いていけてますか?あなたの内的対話を促進したいだけなんです。クライアントさん自身の自己治癒力の信頼がある気がする。実はどんなテクニックを行使しようと、テクニックよりもむしろ、そうしたカウンセラーの愛がクライアントさんを動かす気がする。