プロセスワークにおける「ロール」の概念について

プロセスワークにおける「ロール」の概念について、長年、以下の言葉に納得出来ないでいた。

 

「個人は役割(=ロール)よりも大きく、役割(ロール)は個人よりも大きい」

 

これだと個人と役割の大きさの関係が意味不明。納得出来なかった。
どっちもどっちに対して大きいなんて関係が成り立つんだろうか?

 

9/4(土)ワールドワークとその歴史(講師ドーン・メンケン博士):ミンデル「対立の心理学(仮題)」復刊記念 に参加した。
https://www.value-press.com/pressrelease/278252

 

ドーン・メンケン博士がワールドワークの歴史を辿りながら、大事な概念と、実際のワールドワークの世界大会で何が起きたか?のシェアでお話が進んだ。

まず前提として、ドリームボディと元型のアイデアが仮説として先行してあったのが大事。ミンデルの発見は「どうも個人はその人固有のドリームボディを持つらしい」だった。そこにユングの元型のアイデアを足すと、ドリームボディにもまたドリームボディ元型があるはずだとなる。
そうした目で、世界をみると、ドリームボディを通じて私たちはドリームボディ元型を作り、影響を受けている。

 「個人は{一つの}役割(=ロール)よりも大きく{多様なロールを内包し}、役割(ロール)は{一人の}個人よりも大き{く、元型と繋がって}い{る}」

これは心理学の原理、対人関係が対内関係に影響し、対内関係が対人関係に影響する(厳密に言うと、この原理が通じない方もいらっしゃり、まずはそこの見立てが極めて大事になる)を、別の言い方をしたものだ。

小谷 英文 編著「ガイダンスとカウンセリング 指導から自己実現への共同作業へ」北樹出版 1993.4 
https://honto.jp/netstore/pd-book_00946383.html
→大学時代のテキスト

だから、ロールプレイの時の見立ての難しさもわかろうと言うものだ。

人は誰しもあまり向き合いたくない自分を抱えている。だから、ロールプレイで場にそこに触るロールが登場すると、回避行動が起きる。逃げ出したり、攻撃したり。
ここで場のスピードが早いと、場にいるそれぞれレベルで多様な反応が起きるので、カオスになる。
逆に言えば、そうならないように私たちは普段無難に過ごす社交として振る舞いあっている。

スピリチュアルの強さも現わになる。受け止めて貰えない傷みに対して、生き延びるためには、精神的な強さを磨くしかなかった。傷みが強ければ強いほど、精神的な強さは際立つ。圧倒的なエネルギーがそこには貯まっているからだ。

ミンデルがユング派である所以は、常にエネルギーは対だと発想する点にある。傷みを訴えるクライアントへ遊び心のエネルギーでお誘いするミンデルの姿を見た。個人の中には多様な役割が息づいてる。だから、どれか一つの役割を活性化させれば、その人の中の恒常性(ホメオスタシス)の働きにより、揺らぎ動き、傷みの焦点がズレる。


逆説的だが、カオスの中にこそ、調和と安らぎがある。
実際、自然の生態系がそうだ。多種多様な生物が生きているからこそ、生態系が安定する。
人の心の中の内側でも同じことだ。多種多様な私の内面を受容できていればいるほど、心は安定していく。

 
ドリームボディから始まり、ロール、ランク、フェーズと、常に起きている事象から概念を生み出し、検証し、理論を磨いて来たミンデル。実践から内省した結果、取り出されて来た概念。だからこそ、現場で役立つ。